年々夏の気温が高くなっているように感じる人は多く、熱中症対策は欠かせないものとなりました。また炎天下で働く人にとってそれは避けがたいものでしたが、少しでも暑さから身を守るために作られた空調服が普及していきました。
空調服にはノースリーブのものや半袖、長袖などバリエーションがあり個々に合わせたものを選択できます。
炎天下で作業する時にとくに欠かせない空調服
夏の暑さが年々増している中、学校ではクーラーが各教室に設置されたり熱中症対策に水分補給をするようテレビなどで呼びかけることも珍しくなくなりました。夏に暑さはつきものという考えは間違いありませんが、その対処方法を間違えると命を保持することが難しいこともあるのです。
真夏は特に子供や高齢者など弱者と呼ばれる人たちにとって体力的な面など危険な季節といえますが、炎天下で働かなければならない人たちにとってもまさに命がけの季節なのです。安全性を高めるには高所など危険な場所で働くにはヘルメットや作業服など、身につけなければいけないものが沢山あります。
しかし暑さ対策の観点からは程遠く安全性と暑さ対策のバランスは大変難しいことがわかります。空調服はこのような現場に一石を投じるかのような画期的な服といえ、また普及することにより熱中症対策や節電など様々な利点があるのです。
汗をかくことで省エネ効果が発生
人は体温が上昇すると汗をかきますが、その汗が蒸発することで体温を下げることができます。このメカニズムを利用して作られたのが空調服です。服にファンを取り付け空気を体と服の間に流すことで、汗が蒸発し体を冷やすことが可能になりました。
気化熱を上手く利用することで夏場に室内でエアコンを使うかのような状態を服の中に作ったのです。室外での作業では熱中症を避ける効果がありますが、室内で使用した場合にはクーラーで室内温度を大幅に下げなくても空調服で体を冷やせるので省エネ効果が期待できます。
このように空調服を着用することで様々なメリットがあることがわかりましたが、快適な状態を維持しながら作業を行うことは着用者の不快感を取り除くので、仕事の効率を上げることも可能であるといえます。一見この空調服の作りは簡単なようにも見えますが、今まで誰も考えつかなかったことを形にした開発会社等が技術を他社へ引き抜かれないよう、特許申請はされているのでしょうか。
商品の所在の行方とは
空調服を生みだした企業はこれらの効果を生みだすまでの時間や技術などを考えたときに、特許申請をして他社へ技術の流失を防ぐことをするなど対策はしていたのでしょうか。実際に調べてみるとそもそも「空調服」という言葉自体が商品名であり、特許申請がされていました。
しかし驚いたことに空調服を開発した(特許を取得していた)会社は、製造を委託していた会社から「自分たちの会社が元祖である」と訴えられていたのです。商品製造を委託されていた小さな製造会社が実際には開発した商品なのではないか、と想像力を働かせてしまいますが実際には会社は開発した会社の方が小さく、従業員数は当時14人という一般的に零細企業と言われている規模でした。
これとは逆に製造を委託され訴えた会社は当時約700人という大規模な従業員数を抱えていた大企業であることがわかります。
権利を主張する前に準備すること
なぜこのような事態になってしまったのか不思議に思う人は多いですが、この背景にはどのような流れがあったのでしょうか。実は製造を委託された会社は「空調服」という名前ではなく別の名前で似たような作りの商品の販売を始めました。
元々開発し製造を委託していた側の会社を「商品を真似るな」と訴えたのです。この場合、素人にはどちらの訴えが正しいのか判断がつきにくいのですが裁判の結果、従業員数14人で元々製造を委託していた会社側が勝訴しました。
このような裁判は双方の主張が立証しにくく判決に至るまでもつれがちなのですが、なぜこの従業員数14人の零細企業とも呼ばれる会社は勝訴できたのでしょうか。この会社の社長で空調服の開発にも携わった人は大手企業の開発部門の出身で特許を取ること、商品が開発されていく過程をきちんと記録しておくことの重要性を知っていました。
不正競争防止法の観点からもこのような記録は自分たちの権利を主張する、とても大切なことなのです。
果たして特許だけ取得していれば安心なのか?
この裁判では開発した記録が残されていたことが会社にとって大きな防御策となりましたが、この他にも対策を練る必要性はあるのでしょうか。会社側にとって不測の事態に備える必要は大切であり、特許以外の記録(契約書や商品を売ってきた記録など)は残しておくべきです。
ただ闇雲に記録を残しておくだけではなく、開発されていく過程の記録や試作品の記録など細かく時を追って証明できるような保存が大切であるといいます。また信頼している企業に製造を委託する場合であっても自社の商品の権利を主張できるように、また双方が不快な思いをしなくて済むよう契約書を交わすことは大切です。
契約書が交わされることに慣れていないという会社もあるかもしれません。しかしこのような手順を踏んで安心を得られるのなら、多少手間や時間がかかってもそれだけの価値があるのです。
バリエーションの豊富さ
このように紆余曲折あった空調服ですが、近年ではよく着用している人を目にするようになりました。それだけ需要があり多くの人に支持されていることがわかります。一口に空調服といっても様々なものがあり、例えばヘルメットを被った状態で使用できるパーカー付きのものは頭までファンで発生させた空気が行き届くような構造になっていたり、カラーバリエーションが豊富であること、防炎素材を使用したものなど多岐に渡ります。
またベストや半袖、長袖などそれぞれのシーンに合わせた使い方ができるようになっています。また個々で購入したり職場が積極的に導入したり、従業員数にあわせて購入する会社なども年々増加しているのです。空調服は仕事着だけではなく家事をしている時やガーデニングをしている時、スポーツ観戦時やハイキングなど、使用用途や多くの人へと浸透度は広くなっています。
メンズやレディースなどサイズ展開も豊富であることから、夏だけの活用法だけではなくなっているといえるのです。